第百二十九话
ビルの爆発なら水船理智子を初めて発见した、まさにあの日だ。
あの事件のすぐ翌日に失踪したなら、间违いなく死んでいる。
そして、またしても妹が爆破させる爆弾に捩じ込もうとしていただろう。
その后、その次の爆発を待っていたが。
あっけなく会议场で自爆した？
そうなると、时间的に水船松哉はまだ利嶋の死体を処理できていないはず。
まさか水船理智子が自爆するとは思っていなかっただろうから。
俺はこの推理を2人に闻かせた。
「だから、本当に水船松哉が犯人なら、まだ死体を処理できていないはずです。死体の処理を手伝うはずの水船理智子が自爆してしまったので」
「そうなると……。まさか」
「やり口を见ると本人自らが着手しています。プロの清扫人を雇っていれば、爆発を利用することもなかったでしょう。こんなことは无駄に他人に知らせたところで良いことはありませんから。妹が引き起こす爆発を利用していたこと自体が1人で动いていたというような気がするし……。それが正しければ、利嶋重工业の社长の死体は本人が安心できる场所。つまり、家や别荘のような所に隠しているはずです」
そうだ。まずはここから动かなければ。
正解でなければ、その时に悩めばいい。
「**！ろくでなしめ」
刑事が突然立ち上がった。かなり血圧が上がった颜。真っ赤な颜で叫んだ。
「私はもう担当ではありません。担当チームが変わりました。そのチームは捜査をするわけではなく、事件の终结のために动いています。すでに、上からかなりの圧力をかけられていて动けません」
「家や别荘から死体が出てきたらどうですか？それこそ现行犯ではありませんか？」
「それは……。そうなれば间违いなく引っ込みがつかないでしょう。杀した相手が相手なので」
「それなら时间がありません。早く取り押さえなければ！やつは今日中に死体をどうにかするはずです。1番良い方法が消えたから次善の策を使うはずで、やつは无理をすることになるでしょう。やつが所有している不动产を调べてください。直接が无理なら、他のチームにお愿いすることはできませんか？」
「不动产くらいは调べられると思います。そのくらいは任せてください」
「では、早めに愿いします。その后は、ただ通りががりに検挙したと言い张ればいいのです！利嶋重工业の本家である利嶋家では黙ってないでしょう。死体さえ発见できれば！そうなれば、水船松哉も手を使えなくなります。もう妹はいないので」
「そうですか。すぐに动こうと思います！」
久芳刑事は携帯をぎゅっと掴んで、あちこちに连络をとりはじめた。
「氷上さん。俺たちはやつの不动产が明らかになったら1番有力な所から攻め込もう。不法侵入は俺たちの特技だろ？」
「フフッ、そうね。そっちは私の専门よ。こんな风に头を使うよりはそっちの方がまし！」
氷上が笑いながら杖の剣を掴んだ。
「所有の建物リストが出ました！」
电话の相手からの情报を手帐に书いていた久芳刑事が声を上げた。
そのリストの中で水船理智子の行动半径から最も近い场所。
最も适した别荘を突き止めて氷上に言った。
「じゃあ、多分ここ。ここが1番可能性が高そうだ。行ってみよう、氷上さん！」
「でも、家宅捜査の令状……。いや、何の许可も下りないと思います」
「必要ありません。攻め込みます。久芳さんは怪しい2人组が侵入した家を见て紧急出动したのです。いいですね？」
「でも、大丈夫でしょうか？」
その言叶に俺と氷上が同时に答えた。
「もちろんです」
そしてすぐに氷上の车に乗って最も疑わしい位置にある别荘に到着した。
「水船松哉が会社に来てどこかに向かったって？」
「うん。确认したところによるとそうみたい」
全てを手にした状况で死体は时限爆弾のような存在だ。
1日でも早く処理しようとしているはず。
到着した别荘はとても静かだった。谁もいないかのように见えた。
しかし、谁もいない别荘の驻车场に堂々と车が止められているのは、水船松哉がどれほど差し迫った状态なのかをよく物语っている。
番号照会をしなくても别荘の主人の车であることは简単に予想できた。
违う场合？
それこそ、攻め込んでみればわかることだ。
「できるだけ静かに入ろう。こっそり押し寄せるのが1番だから」
氷上と互いにささやきながら别荘のドアの前で止まった。氷上は少しも踌躇することなく剣を抜いて扉を切ってしまった。
木のドアでもないのに、ドアは豆腐のように切られた。
おかげで床に落ちてバタンと音を出した。
その音に惊いた氷上が头を掻いた。
「あら、无意识に。壊す习惯が……」
とにかく、氷上は。
「とりあえず入ろう」
飞び入って家の隅々をかけずり回った。しかし、水船松哉の姿は见えなかった。
机の上の日记帐のようなノートが目にとまった。水船松哉のものと同じダイヤリーだ。
この男も日记を书いていたのかと思い开いてみると、日记ではなかった。
よく见るとひどい内容だった。様々な拷问技术について整理されていた。
[鉄の女人]
[女性の形をした拷问器具。扉の内侧に钉を打って设计する。全方向にスパイクが设置されていて、中に闭じ込めて扉を闭めると全身が打ち抜かれる构造。]
こういった拷问方法や考案した拷问器具が数えきれないほど书かれていた。
こいつは一体。
社会的地位のある部类は妹のおかげで最近になって手を出し始めたから。権力でどうにもできない一般人をつかまえてきて、こんな方法で楽しんでいたのか？
こいつこそ本当の暗じゃないか。
「长谷川！ここ、ベッド！ベッド」
本を见ながら舌を巻いていると、氷上が俺の腕を引っ张った。
「ベッド？」
寝室に导かれて行ってみると、そのベッドには车轮がついていた。
氷上は肩をそびやかせた。
その意味は明らかだ。
车轮のついたベッド。
臓器密売の组织が使っていた方法だ。
政治家も财阀も同じ方法を共有しているのか？
ベッドを押すと、その下には地下へ繋がる阶段が隠れていた。その地下室に入って行くと、蛍光灯の明かりがついていた。おかげで暗暗の代わりに悪臭が鼻を刺した。
血生臭さのような悪臭が。
地下室は中世の拷问道具を全部作ったのか、奇怪极まりない。
その地下室には、死体をずるずると引きずっている水船松哉がいた。
「くそっ。理智子のやつ。死体処理に好都合なことをしてくれてたのに……。自爆だなんて」
死んだ妹に対する哀悼どころか、ぶつぶつと呟きながら死体を引きずる姿はとうてい见ていられなかった。
水船松哉が引きずっている死体は写真で见たことのある利岛重工业の社长だ。
「な、何だ、お前たちは！」
悪党の典型的な台词。
俺は前に出る必要もなかった。
氷上の蹴りが水船松哉の胸に入って、やつはごろんと転がりこんだ。
そして、まるで组んでいたかのように久芳刑事が押し入ってきた。
いや、まるで组んだかのようにではないか。本当に组んでいたから。
「これで一件落着だね。氷上さん」
「本当にこいつだったわね。それに、この床に染まった血を见ると……。被害者は他にもいそうだわ」
氷上が呆れた表情で首を横に振った。
そのように状况は终わった。
刑事たちと一绪に家から出てきて、水船松哉は紧急逮捕された。
予想通り、利嶋家では厳正な调査を要求してきた。
结局、水船松哉の持つ力は何の役にも立たなくなった。
こうなったら。攻略完了か？
すでにメディアでは水船家に非难を浴びせていた。水船松哉は完全に终わりだ。
水船理智子は死んで、别の犯人は捕まった。
だから、どう见ても攻略完了だった。
ニュースを见ながら軽い気持ちでシステムを确认した。
しかし。
何の攻略ウィンドウも出てこなかった。
システムには全く変化がなかった。全く。完璧に。
「氷上さん」
慌てて、运転している氷上を呼んだ。
「氷上さん、俺の頬を叩いてくれ」
「え？急に何を言ってるの？」
「目を覚まさないと。今すごく気が気じゃないんだ」
「だからって、頬を叩く？」
「うん。頼む！」
氷上は首をかしげたが、
軽く俺の頬を引っ叩いた。
パァーンッ！
优しく叩きそうな、心配そうな颜をしていたのに、何だこのパワーの强さは。
痛くてたまらない。
痛い。
痛すぎる。
梦ではない。
现実だ。
そもそも今のこの状况が梦なわけがない。
だから。
方向をかなり间违えていたということ。