クリスマスSS
2015年 12月25日 (金) 00:23
(くりすますですね(棒))
クリスマス――それは、異世界では全く関係ない、縁もゆかりもない、宗教行事だ。
なので、つまりそれを知る者が勝手にしていい。それこそが異世界における宗教イベントだろう。
「へー、それで、その凄い人の誕生日を祝うのがクリスマスってわけね」
「それで、靴下と引き換えにプレゼントを貰えるっちゅーことなんか」
「ごちそう……おにく……チキン……たのしみ、です」
「十字架? 別に吸血鬼の弱点じゃないですよねそれ……え? 聖なるモノ? あ、それは弱点ですね。私には効かないですけど」
「クリスマスツリーっていうのを用意すればいいんですね」
「異世界の宗教行事ですか……魔法的な意味合いもあったりします?」
というわけで、クリスマスについて色々教えておいた。
ん? 1つ変なのが混じってたって? ハハハ。 何言ってんだ、俺がクリスマスだ。 おかしなことなど何もない。
そんなわけで、クリスマス――俺は約束された勝利の靴下を手に入れる。
それは、もはや疑いようのない結末。
この異世界で12月24日に相当するその日を俺は迎えた。
「ケーマさん、メリークリスマスですよ! あ、クロさんも元気ですか?」
勇者(ワタル)のことすっかり忘れてた。
いつも15日くらいに借金の支払いに来るのに、今月は来るの遅いなぁと思ったらこれ狙ってやがったか……!
「……あれ? あれれ? そこのそれ、もしかしてクリスマスツリーですよね? あれれーやっぱりケーマさん日本人……」
「父が、教えてくれましてね」
「あ、そ、そうでしたね。いやぁ、でもこうして異世界でクリスマスネタが通じる相手が居るっていいなぁ!」
チッ、と舌打ちする。
「クロさん、知ってますか、クリスマスのサンタクロースっ!」
「……ご主人様から聞いてますが」
ニクはワタルに話しかけられ、そっけなく答えた。
おい、余計な事言うんじゃないぞ。ウチのサンタは靴下と引き換えにプレゼントを置いてくという設定なんだ。マトモな事言ったら口を縫い合わせるぞ。
「良い子がいるお家に侵入しては、靴下にプレゼントをつっこむ聖人なんですよ!」
「? ん……?」
よーし口を閉ざせ。それ以上喋るな。
「クロさんは良い子でしたか? だとしたらサンタさんがプレゼントくれるかもしれませんね!」
「……良い子、ですか。なるほど……」
「おい、そこの勇者。ちょっとこっち来い」
俺はワタルを食堂の隅に呼び出す。
「なんですかケーマさん。僕は日本人としてこう、イベントの普及をですね」
「余計な事を言わないでくれないかな? こっちにも段取りっていうモノがあるんだよ」
「……大丈夫です、今日は僕がサンタです、クロさんに喜んでもらえるプレゼントを用意しましたから!」
おう、俺も用意してるよ。靴下と引き換えのやつを!
「ついでにロクコさんや、ネルネさん。あとイチカさんとレイさんとキヌエさんの分も用意しましたし。あ、ケーマさんにも用意してますよ。冒険や生活に役立つ、1日あたり1杯の水を出すことができるコップ型魔道具です、どうぞ」
無地の紙にラッピングされて紐でくくられた包みを受け取る。……お、おう、ありがとう。地味にいらないようなそうでもないような。
「あとはこう、レース編みのリボンとかを用意しました。ふっふっふ、ケーマさん、プレゼント置くの協力してくださいね!」
「俺の用意したプレゼントが霞みそうだな……まぁ、折角だ。俺が預かり、置いておくことにしよう」
「……む、直接置けないのは残念ですが、女の子の寝床に忍び込むのもなんですからね。お願いします」
よし、これで被害は最小限で済んだな。
*
そしてその夜。プレゼントを置いてこようとニクの部屋に侵入したところ、扉の死角に潜んでいたニクに組み伏せられた。
……「『良い子』じゃないご主人様にもプレゼントを渡しなさい、サンタ!」って言ってた。気持ちはうれしいよ、うん。……けど俺、悪いことなんてダンジョンマスターと勇者から金貨巻き上げるくらいしかしてないというのに。あ、こりゃ貰えたら驚くわ。
2015年 12月25日 (金) 00:23
(くりすますですね(棒))
クリスマス――それは、異世界では全く関係ない、縁もゆかりもない、宗教行事だ。
なので、つまりそれを知る者が勝手にしていい。それこそが異世界における宗教イベントだろう。
「へー、それで、その凄い人の誕生日を祝うのがクリスマスってわけね」
「それで、靴下と引き換えにプレゼントを貰えるっちゅーことなんか」
「ごちそう……おにく……チキン……たのしみ、です」
「十字架? 別に吸血鬼の弱点じゃないですよねそれ……え? 聖なるモノ? あ、それは弱点ですね。私には効かないですけど」
「クリスマスツリーっていうのを用意すればいいんですね」
「異世界の宗教行事ですか……魔法的な意味合いもあったりします?」
というわけで、クリスマスについて色々教えておいた。
ん? 1つ変なのが混じってたって? ハハハ。 何言ってんだ、俺がクリスマスだ。 おかしなことなど何もない。
そんなわけで、クリスマス――俺は約束された勝利の靴下を手に入れる。
それは、もはや疑いようのない結末。
この異世界で12月24日に相当するその日を俺は迎えた。
「ケーマさん、メリークリスマスですよ! あ、クロさんも元気ですか?」
勇者(ワタル)のことすっかり忘れてた。
いつも15日くらいに借金の支払いに来るのに、今月は来るの遅いなぁと思ったらこれ狙ってやがったか……!
「……あれ? あれれ? そこのそれ、もしかしてクリスマスツリーですよね? あれれーやっぱりケーマさん日本人……」
「父が、教えてくれましてね」
「あ、そ、そうでしたね。いやぁ、でもこうして異世界でクリスマスネタが通じる相手が居るっていいなぁ!」
チッ、と舌打ちする。
「クロさん、知ってますか、クリスマスのサンタクロースっ!」
「……ご主人様から聞いてますが」
ニクはワタルに話しかけられ、そっけなく答えた。
おい、余計な事言うんじゃないぞ。ウチのサンタは靴下と引き換えにプレゼントを置いてくという設定なんだ。マトモな事言ったら口を縫い合わせるぞ。
「良い子がいるお家に侵入しては、靴下にプレゼントをつっこむ聖人なんですよ!」
「? ん……?」
よーし口を閉ざせ。それ以上喋るな。
「クロさんは良い子でしたか? だとしたらサンタさんがプレゼントくれるかもしれませんね!」
「……良い子、ですか。なるほど……」
「おい、そこの勇者。ちょっとこっち来い」
俺はワタルを食堂の隅に呼び出す。
「なんですかケーマさん。僕は日本人としてこう、イベントの普及をですね」
「余計な事を言わないでくれないかな? こっちにも段取りっていうモノがあるんだよ」
「……大丈夫です、今日は僕がサンタです、クロさんに喜んでもらえるプレゼントを用意しましたから!」
おう、俺も用意してるよ。靴下と引き換えのやつを!
「ついでにロクコさんや、ネルネさん。あとイチカさんとレイさんとキヌエさんの分も用意しましたし。あ、ケーマさんにも用意してますよ。冒険や生活に役立つ、1日あたり1杯の水を出すことができるコップ型魔道具です、どうぞ」
無地の紙にラッピングされて紐でくくられた包みを受け取る。……お、おう、ありがとう。地味にいらないようなそうでもないような。
「あとはこう、レース編みのリボンとかを用意しました。ふっふっふ、ケーマさん、プレゼント置くの協力してくださいね!」
「俺の用意したプレゼントが霞みそうだな……まぁ、折角だ。俺が預かり、置いておくことにしよう」
「……む、直接置けないのは残念ですが、女の子の寝床に忍び込むのもなんですからね。お願いします」
よし、これで被害は最小限で済んだな。
*
そしてその夜。プレゼントを置いてこようとニクの部屋に侵入したところ、扉の死角に潜んでいたニクに組み伏せられた。
……「『良い子』じゃないご主人様にもプレゼントを渡しなさい、サンタ!」って言ってた。気持ちはうれしいよ、うん。……けど俺、悪いことなんてダンジョンマスターと勇者から金貨巻き上げるくらいしかしてないというのに。あ、こりゃ貰えたら驚くわ。