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【日语原版】木原音濑·『新年特别企划短篇』

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这个是老师比较早年的作品,因为是日文原版,懂日语的筒子可以自己试着翻译一下,虽然我也是学日语的,不过果然还是等级太低,对话大部分还是能够看懂了,但是描述性的语句还是很困难啊……


1楼2010-07-12 11:02回复
    モルタルの二阶建てのアパートは、阶段がきしんで仕方がなかった。宫原が一人暮らしを始める时に、何を基准に部屋を选んだのか石田は知らないが(闻いたところで宫原がまともな返事を返すとも思えなかったが…)どうせろくな理由もないだろう。
    ノックなんてするような、上等な造りのドアじゃない。ノブに手をかけてひくと、简単に扉は开いた。
    「みやじ、いるのか」
    石田は宫原を名前を呼ぶ时に、中学生の顷からのあだ名で『みやじ』と呼ぶ。こればかりはバンドを组んで十年以上経ってからも変わらない。
    名前を呼んでも部屋の中から、返事はない。いつ来ても宫原の部屋は时代を置き忘れたような奇妙な匂いがする。正面の中央が微妙に歪んだ棚には鉄制の茶瓶がずらりと并び、古い浮世絵が无造作に壁に贴られている。そして夏なのに、未だ部屋の隅を占めている火钵。
    石田は扉を闭め、ポストの中を探った。この部屋の主は、键をポストの中に入れるのは忘れなくても、部屋に键をかけることは简単に忘れてしまえるような男だ。扉にきちんと键をかけて、もとあったポストの中に置いてから、足早に阶段を降りた。
    「どう、いる」
    「駄目ですよ。出挂けてるみたいです。あいつ散歩に出挂けたら半日でもぶらぶらしてるような奴だから…」
    丸眼镜の男は、うつむき加减にため息をついた。
    「话したかったのになあ」
    「宫原が帰ってきたら、山本さんの方に连络とるように言いますよ」
    「うん、そうしてくれる。俺なんかが出しゃばったりしてこじれると嫌なんだけどさ、何かこう话が进んでないだろ。心配なんだよ」
    「そうですね…」
    「宫原くん、どう。最近さ」
    石田は少し首を倾げた。
    「どうって…いつもと変わりませんよ。けどやっぱり事务所の解散っていうのはきつかったみたいですね。やっぱし暗いですから」
    「そうだよねえ。だから俺としては少しでも早く别の事务所なり契约して、活动を再开して欲しいんだけど」
    男は唇を尖らせた。石田と付き合いの古い山本というこの男は音楽雑志のライターだ。
    いつも石田の所属するバンドの特集を组んでくれる。
    石田は十年前にE.L.Fというバンドのギターでデビューした。デビュー
    当时は、ヴォーカルの宫原浩次の强烈な存在感と、ストレートなメロディ、歌词で注目されていたが、それも年月を追うごとに色あせてきた感じがあった。
    そんな言い方をすると语弊があるもしれない。バンド自体がその方向性を见失ったと言う方が正しいのだろう。メンバーの四人が悩んで、迷ってそうして作り上げた作品は、结局は自分たちの自己満足でしかなく、外へ広がりをもつどころか、自分たちの轮の中だけで理解できないような形になってしまった。それが结局、セールスに影响し、自分たちの出したアルバムやシングルの売上は灿々たるものだった。


    2楼2010-07-12 11:04
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      不思议なのは、これだけ底を这うようなセールス、理解できない、闻けないという评価をうけながら、山本の音楽雑志だけは自分たちを取り上げつづけてくれたことだった。
      最初からE.L.Fのファンだと宣言して、レコード会社の契约を切られ、事务所まで解散してしまった自分たちを、未だに心配してくれている。
      「じゃ石田君、连络頼むね」
      山本は帰っていった。今日も、新しい事务所の话をもってきてくれていたのだが、肝心の宫原がいなくて话にならなかった。
      石田はため息をついて歩きだした。事务所にも见放された自分たちが、これから先にどうなるかの不安はある。中学生の时の友人同志で组んだバンド。最初はこんなに本格的になるとは思わなかったが、高校生の顷から、もしかしたらギターで食べていくことができるかもしれないと思うようになった。
      デビューするまではよかったけれどその先なんて考えてなかった。待望の新人のように扱われ、最初の顷は自分でも少しぐらい売れるんじゃないかと思ったけれど、结果は酷いものだった。
      もう十年だ。一绪にやりはじめてもうそろそろ十年になる。自分を误魔化すことが、もうできなくなっているんだろうと石田は思う。バンドの実质的な収入だけではとても食べてけずに、石田はバイトをして日々の粮をかせいでいた。近顷はバンドよりもそちらの方が主な収入になっている。
      バイト先の主人に、言われたことがある。
      「バイトなんて言わずにさあ、うちに就职しちゃいなよ、石田君」
      石田は自分がプロのギタリストなんだと、细かなプライドから胸を张って言うことができなかった。
      E.L.Fは四人で一つのバンドだけど、确かに四人で一つなのだけど、自分が抜けても成り立っていけるかもしれないと思うことがある。それはドラムのトミこと富広や、ベースのナルこと高槻も思うところだろう。だけど宫原浩次のスペア、代わりはいないのだ。
      探すつもりもなかったが、知らずに石田の足は宫原が好んで散歩する河川敷に向かっていた。宫原は一人で、时々女と一绪に果てのない散歩をする。石田も突き合わされたことがあるが、宫原の散歩は散歩の名を借りた耐久レースのようで、一度でギブアップした。
      まるで异国に降り立った兵士のように、无言のまま宫原は延々と歩き続ける。そうして立ち止まっては訳のわからないことを闻いてくる。いつものことだ。
      「石君?」
      考え事をしながら歩いていた石田は、不意に目の前に现れた宫原に惊いた。考え事をしていて、全く前を见ていなかった。何年も前のジーンズにTシャツ、いつもの宫原の恰好で、河川敷沿いにある石を置いただけのおざなりなベンチに腰挂けている。
      


      3楼2010-07-12 11:04
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        「何してたんだ」
        宫原は肩まである髪の毛を、右手でぐしゃぐしゃとかき回した。
        「散歩」
        座っていてそれはないだろうと思ったけれど、宫原が散歩と答える以上、それは散歩なんだろう。
        「山本さんがさ…」
        无関心な目が、山本の名前に少しだけ兴味を示す。
        「お前と话したがってたよ。事务所のことで相谈したいことがあるってさ」
        「ふうん」
        さっきは兴味深そうな目をしていたのに、次の瞬间、宫原は明后日の方向を向いていた。
        また髪を掻きむしる。髪だけみたら駅前のホームレスと大差はない。
        「石君、俺真面目に考えたんだけどさ…」
        「なに」
        「俺さ、真面目に駄菓子屋やろうと思ってんだよ。もう音楽なんてやめてさ」
        またはじまった。石田は小さく息をついて宫原の隣に腰を下ろした。
        「音楽やめるの?」
        「俺って才能あると思うんだよ」
        「何の、駄菓子屋のおやじのか」
        「违う。音楽。俺の作る音楽ってメロディいいんだよ。歌词もいいんだよ。でもどうしてそれがみんなに伝わらないのかってずっと思ってたんだよ。おかしいなって…」
        「そうだよな」
        相槌を打ちはするけれど、石田は疑问を抱かずにはいられなかった。宫原の自信がどこから出てくるのか分からないからだ。确かに宫原はすごいと思う。ここまでエレファントカシマシを引っ张ってきたのは确かに宫原の力だった。
        自分は宫原を、宫原の才能を信じられないでいるんだろうか。
        人に话をしたら、十年も一绪にいてまだ気がつかなかったのかと笑われるかもしれない。だけど疑いはしても、石田はそれを认めたくなかった。
        「駄菓子屋やるってのも、よく考えたら面倒だよなあ。金もかかるしさあ」
        宫原は空を仰いだ。道行く人は平日の昼间にのんびり川端に座っている男二人をどんな
        目で见ているんだろう。
        「石君さあ…」
        宫原が振り返る。
        「俺と逃げようぜ」
        石田が首を倾げると、宫原は眉间に皱を寄せた。
        「逃げるんだよ。ここにいたら色々とうるさいからさ。そんなことと无縁の场所へにげようぜ。戸籍も墓もいらないようなド田舎に行って、自给自足の生活するんだ」
        「自给自足か」
        「そっ。牛で田んぼとか畑とか耕してさあ、服とか动物の皮で作るの。蚕とか饲ったりしてさあ…でも俺、どうやってそれで布つくるか知らないけど、まあどうにかなるだろうしさ」
        まるで絵空事だ。宫原は时々真面目な颜でとんでもないことをいう。そんなことができる筈がないのに、宫原の中ではまことしやかな现実になる。
        「いいよね、それ」
        相槌をうっても、真面目にとりあってない自分を知っている。


        4楼2010-07-12 11:04
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          「なっ、なあ。そう思う」
          「ああ」
          宫原は不意に立ち上がった。
          「今から行こうぜ」
          「今から?」
          「どうせ何もかも舍てるんだから、いつから
          でもいいだろ。今からいこうぜ」
          宫原も颜は真剣だった。相槌をうった自分を石田はすぐさま后悔した。いい加减だったと订正することもできず、自分のポケットの中にある财布の残高を计算した。
          男二人が安ホテルに一泊するぐらいの余裕はある。明日は店の休业日。一日ぐらい宫原のきまぐれに付き合っても大丈夫だ。
          「行こうか」
          「行くぜ」
          宫原はうれしそうだった。何がそんなにうれしいのかわからない。だけど石田も正直逃げたいような気持ちがどこかにあった。
          宫原は突然歩きだす。石田は慌てて追いかけた。
          「どこ行くんだよ」
          「どこって、逃げるんだろう」
          「歩いて行くつもりかよ。そんなことしてたら时间ばかりかかるぞ。电车でもバスでも使えばいいだろ」
          宫原は首を倾げた。
          「电车って言うのが…俺、何か嫌なんだよなあ。やっぱ人间便利になり过ぎちゃいけないって気がするからさ」
          「でも、歩いてじゃ远くへ行けないぞ」
          宫原はきょとんとした颜をした。
          「まあ、そうだな。今日ぐらいはいいか」
          妥协の気配。急に歩みの遅くなった宫原の隣で、石田もゆっくりと歩きはじめた。
          


          5楼2010-07-12 11:05
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            近くの电车の駅で、宫原は急に海が见たいと言いだした。
            「绝対に海だよ。海と山の侧でさあ。そんな所がいいよ」
            駅名パネルを见上げながら、石田は首を倾げた。どうすれば海沿いの电车に乗り継ぎできるかわからなったからだ。
            「もう适当でいいからさ」
            道顺を组み立てるまでに宫原が先に歩きだしてしまい、石田は慌ててその后を追いかけた。宫原は近距离の切符を买うと、一番最初にホームに滑り込んできた电车に何のためらいもなく飞び乗った。
            昼过ぎの时间帯は人も少なく、椅子にもぽつぽつぐらいにしか人はいない。石田は椅子に座ったが、宫原は石田の隣、细い鉄柱にもたれかかるようにして立ち、决して座ろうとはしなかった。
            「石君さあ…」
            それまで思い诘めたような颜で黙り込んでいた宫原が、不意に话しかけてきた。
            「アレさ」
            宫原がアレ、と视线をやったのは电车の中にある车内広告だった。
            「纸の无駄だよあな。俺いっつも思うんだけ
            どさあ、日本人って无駄が多いんだよなあ。
            何にしても宣伝、宣伝でさ。あの纸つくるのに外国の木を伐采してんだよ。それなら自分のトコの木を切れって言うんだ。いっそのこと输入禁止令しけばいいんだ。そしたらもう谁も无駄に木切ったりしないと思うんだよ」
            「そんなこと考えてたのか」
            「ん、まあね」
            「宫原、座らないか」
            「ん、いいよ。俺。立ってるから」
            「立ってると话しづらいからさ、座ってくれないかな」
            「ん…、そうかあ」
            少し迷うふりを见せたけれど、宫原は椅子にこしかけた。椅子に座っても、まるで落ち着きのない子供みたいにそわそわしている。暇があればぼさぼさののび过ぎた髪を引っ张
            り、まるで贫乏ゆすりをするように膝を揺する。
            「宫原はさ」
            「ん」
            「考えすぎなんだよ。いっつも。何してもさ。これは俺だけじゃなくて、皆が言ってることだけどね」
            「そんなことねえよ」
            拗ねたような素振りで、反论する。
            「そうだよ。だから宫原はいつも疲れてるんだ。あんな広告なんて放っておけばいいんだよ」
            「でもなあ…」
            気になりだしたら、どつぼにはまるまで落ち込む。宫原の精神状态は、そのまま作る音楽に反映されてきた。不安定な心の状态もそのままに。
            心の葛藤がそのまま歌になる。时々理解できないような言叶や声を选んだりする。
            どこか暗い表情の宫原の颜が、ぱあっと明るくなった。
            「石君、海だ」
            笑颜につられて振り返る。そこにはコンクリートの岸壁に面した海が见えた。
            「何か汚ねえよなあ」
            「仕方ないよ。东京湾だし」
            「やっぱ人间が悪いんだ」
            「宫原だって人间じゃないか」
            「そっ、だから俺も悪いんだよ」
            たまらなくストレートで、自分の中でこわれかけている宫原。自分で自分の状态を把握できなくていつも同じ场所をぐるぐる回っている。エキセントリックな男にひかれているのはなにも自分だけじゃない。雑志记者の山本も一绪だ。
            「逃げるんならさ、もっと绮丽な海がいいよな」
            「そうだよなあ」
            宫原も海を见ている。汚い海をずっと见つづけている。不意に何か口ずさむ。今までの
            自分の歌でも、他人の歌でもない。あまり驯染みのないメロディーラインだった。
            「俺さ、音楽やめても歌うのは止めないよ」
            振り返って、宫原は真面目な颜で呟いた。


            6楼2010-07-12 11:05
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              Next
              最终的に二人が降り立ったのは、夕方に近い时刻だった。海に沈みかけた夕日を见ながら、宫原が胜手に电车を降りた。石田もそれを追いかける。
              あまり人のいない、寂しい駅だった。宫原は迷うことなく海へ向かって歩いていく。ほどなく海岸に出たが、ぐるりと浜辺を见渡した宫原は、
              「ほんと、汚ったねえよなあ」
              ぼそりと呟く。确かに远くから见たらオレンジ色の海面しか见えなかったけれど、近くで见る浜辺にはあちらこちらでゴミが散乱し、海面は灰色を帯びていた。
              颜が暗かったから、宫原はまたこの浜辺の汚さについて考えてるんだろう。そうしていきつく结论がどうなるかまでは、石田には分からないけれど。
              宫原は浜辺に腰を下ろして、暗くなる水面をじっと眺めている。
              「みやじ」
              名前を呼んでも返事をしない。ただひたすらに暗い海を见つめている。石田は宫原の视线を振り向かせる为に、乱暴に肩を揺さぶった。
              「どうするんだ。ここにもう少しいるのか」
              「あっ…おれ…」
              「そろそろ泊まる所を探さなきゃな」
              宫原がきょとんとした颜をして、そして次には不愉快そうな表情になった。
              「别に泊まらなくてもいいじゃないか」
              「え…」
              踌躇いを见せた石田に、宫原は噛みつくような喋り方をした。
              「俺たちは何にも頼らないで自给自足の生活をしていくんだから、今更どこかに泊まらなくてもいいだろう」
              确かに、确かに最初はそんなことを言っていたけれど、石田はまさか宫原が初日からそんなヘビイなことを言いだすとは思わず、戸惑った。
              「野宿でいいじゃんか。野宿、野宿。男なんだからさ。今だったらそんなに寒くもないだろが」
              确かに六月というこの季节、冻死することはないだろうが、石田はさっきから颜に吹きつけてくる海からの生暖かい风が気になっていた。
              天気が崩れても、雨が振りだしてもいいんだろうか。けれどこんな风に意地を张り出した宫原にはもう谁も太刀打ちできない。
              「分かったよ。泊まらなくてもいいけどそれなりに安心して眠れる场所を探しておいた方がいいんじゃないだろうか」
              「どこでもいいだろ」
              「まあ借りにさ、夜中にトイレに行きたいとか思った时に、なかったら困るだろう。それぐらいの不便は克服しといた方がいいと思うんだ」
              「まあ、そうだな」
              「公园がいいんじゃないかと思うけど」
              宫原は考える风に首を倾げた。
              「そうだな、そうだよな」
              「暗くなるしさ、そうなる前に探しておいた方がいいと思うんだ」
              「まあな」
              「俺探してくるけど、みやじはどうする?」
              「あ、俺も行く」
              海から离れて、今晩のねぐらになりそうな公园を探す。别に公园でなくても、駅前とかでもいい。
              「何か公园で寝るって、浮浪者みたいだな」
              宫原の言いぐさに、石田は少し笑った。确かに自分达のしていることは浮浪者と大差ないだろう。


              7楼2010-07-12 11:06
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                「同じようなものだろ。仕事は切れて、ぶらぶらしてるんだから」
                何がおかしいのか、宫原はニッと笑った。
                「俺、前から思ってたんだけど、浮浪者ってあるべき人の姿だよな」
                また変なことを言いはじめた。
                「何もなさず、関わらずに生活していくだろ。それは一种凄いことだと思うんだよ」
                「确かにね」
                石田は立ち止まって振り返った。
                「みやじの言うように、考えるみたいに世间に何の迷惑もかけずに生きていくのはいいかもしれないけど、自分はそれで満足しているんだと思うか?」
                「そんなの自业自得だろ。俺が言いたいのはその姿势だよ」
                訳がわからなくなる。何となくはわかるけど、石田は宫原の訳の分からない世界観を上手く表に、宫原すらまとめられない世界をどうにか言叶の形にしてやることができない。
                石田も口がいい方じゃない。必要最小限しか言叶は喋らない。宫原はきっと考え过ぎて全部を全部言叶にすることができない。そうして微妙にずれていく価値観。
                「みやじ、あそこに公园があるよ。あそこに行ってみようか」
                交わらない気持ちを误魔化すように、石田は少し先に见える公园を指さした。宫原はどこか釈然としない颜をしていたけれど、それ以上は闻いてこなかった。掘り下げた话を石森が苦手だと知っていたからなのかもしれない。黙ってついてきた。
                公园は思いのほか大きいものだった。子供用の游び道具も沢山あった。その中で、大きな円筒を横倒しにしてそれを三つ重ねたような游び场があり、二人はそこを今晩のねぐらに决めた。
                丸いドラム缶を横にしたような空间は、大人二人が足を折り、并んで何とか座れるぐらいの大きさだ。でもその気になれば长さはあるから横になることもできる。
                宫原をそこへ残して、石田はコンビニで食べられそうなものを买った。石田が买ってきたコンビニ弁当を、腹も空いていたのか宫原は势い良くがっついていた。
                强いて言えば今宫原が食べているようなコンビニの弁当だって、伟大なる文明の象徴みたいに思えるが、食欲に捕らわれた宫原はそこまで考えを思いめぐらせる余裕はないようだった。
                弁当を食べている间に、危惧していたようにぽつぽつと音がしはじめた。宫原も雨の気配に食べる手を止める。最初はぽつぽつだった雨の势いが、そのうちにザーザーと横殴りの强さに変わった。
                「すごい雨だな」
                宫原が狭い中を这い、雨の幕に覆われた外の景色を眺めている。石田はこのまま宫原が外に出ていってしまわないかと心配になったが、宫原はそのうち石田の隣まで引き返してきた。
                「何か寒いよなあ」
                Tシャツ一枚では寒くもなるだろう。けれど石田もシャツ一枚。贷せるような余裕はない。
                「もっとくっつけよ。そうしたらマシだろ」
                宫原が猫みたいに隣にぴったりとくっついてくる。おとなしい宫原は何だかおかしい。
                时々宫原は髪の毛をかいた。长く伸ばしているからといって宫原は髪の手入れをするわけじゃない。のばしっぱなして、毎朝栉をいれているかどうかもあやしい。
                一时期、江戸时代に倾倒した顷は、本気で丁髷にすると言いだすのではないかと思ったけれど、宫原にもそれなりの自制心はあったらしい。
                何気なく触れた。ぼさぼさの髪の毛はやっぱり女の子とは违って柔らかい手触りではないし、どちらかといえば硬い。
                宫原が振り返る。冲动的に唇を重ねた。冷たくてカサカサした唇。宫原も颜を背けたりしなかった。


                8楼2010-07-12 11:06
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                  「そういやさあ…」
                  キスの后で、宫原は思い出したように呟いた。
                  「中学の顷に、よくお前とキスしたよな。ほら俺が隣のクラスの西沢?#123;子と付き合ってた时にさ。俺がキスの仕方がわからないからっておまえとよく练习してたよなあ」
                  「そんなこともあったな」
                  「どうやって息したらいいかなとかさ。今なら普通に鼻で息すりゃいいってわかるけど、その顷はそれ淮髥栴}でさ」
                  昔のことを话す宫原は楽しそうだった。こんな楽しそうな宫原をみるのは久しぶりだった。最近は事务所の解散や契约切れとか雑多なことが多くて、笑うような余裕なんてなかった。
                  石田は宫原に头を引き寄せて、もう一度キスした。舌を络めるようなキスを最初にしたのも宫原とだった。完全な游びだったけど、何となく背中がゾクゾクしたのだけは今でもはっきりと覚えている。
                  「ヤバイよ、石君」
                  宫原のヤバイは体の変化で分かる。抱き寄せた股间のあたりが硬い。
                  「今、禁欲中だからさあ」
                  言われても、この场所は寒いし、キスは気持ちがいいから止めたくない。宫原も嫌な感じはしないのだろう。石田以上に积极的に口腔を贪ってくる。
                  キスの合间の息継ぎ。宫原はこぼれ落ちそうな唾液を自分のTシャツの肩口にこすりつけた。目があうと、宫原はニッと笑った。
                  「何か俺たち、ホモみたいだな」
                  その颜に诱われるように、また唇を贪る。たまらなくなって头を掻き抱いた。このぐしゃぐしゃの髪の、わけわからないことばかり言う头のどこにみんなこんなにひかれてるんだろう。
                  「俺、駄目」
                  宫原が体を放そうとして、それが嫌で石田は抱く腕に力をこめた。
                  「してやるから」
                  中学生の顷に、マスのかきあいをしたのは数知れず。その时の?#123;子で石田は踌躇うことなく宫原のジーンズのファスナーを开けた。
                  「いいって、石君」
                  だけどパンツの中に指を滑り込ませて握りしめた时にはもう何も言わなくなっていた。
                  少しの刺激で、まるで中高生のガキみたいに勃たせている。
                  「本当に最近してなかたんだな」
                  「だって、别れたからさ」
                  宫原が付き合っている女と别れたのは、ほんの一ヵ月ほど前の话だった。腕の中で宫原が细かく震えたかと思うと、势いよく放出した。同时に体が弛缓する。生臭い匂いが、辺りにたちこめる。宫原は慌てて自分のものをパンツの中にしまっていた。
                  これだけ近くにいる。石田は宫原の首筋に颜を埋めた。
                  「みやじさあ…」
                  宫原から返事はない。
                  「もう辞めるつもりなのか」
                  「何をだよ」
                  「歌うこと」
                  返事があるまでに间があった。
                  「俺はずっと、一生歌うよ」
                  「そうじゃなくて、コンサートしたりとかCDだしたりとか、そういう意味でさ」
                  返事はない。
                  「契约切れてさ、それをいいことに辞めようとか思ってないか」
                  「それはお前も同じだろう」
                  宫原の口?#123;には、石田を非难するような响きがあった。
                  「逃げるのか」
                  石田の言叶に、宫原が振り返った。
                  「谁も逃げてない」
                  「辞めるっていうのは、そういうことだろ」
                  「辞めるなんて言ってねえだろ」
                  怒ったような颜だった。
                  「じゃあどうして山本さんが来るってわかってて出挂けたりしたんだよ。あの人は本当にお前に惚れてるよ。周りが见てておかしいぐらいにさあ。あの人だけだよ。お前の言叶にちゃんと答えてくれるのは。その人が事务所の话とかもってきてくれたのに逃げただろ。


                  9楼2010-07-12 11:06
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                    人の诚意には、お前もちゃんと返事をするべきじゃないのか」
                    宫原が头をかきむしりはじめた。そうして背中を丸めた。
                    「责めてる訳じゃないんだ」
                    「嘘つけっ」
                    宫原は小さくなったまま、肩を震わせた。
                    「俺、才能ないかもしれない」
                    「宫原」
                    「俺、本当の马鹿かもしれない」
                    「そんなことないよ」
                    「でも俺、まだ自分を信じていたいんだ。まだ自分には才能があるって、思っていたいんだ。もうないかもしれないのに。俺って所诠ここが限界なのかもしれないけど、そんなの信じたくないんだ。わからないんだよ。自分のことがわからない」
                    宫原の葛藤が、怖いぐらい伝わってくる。いつも自信満々で、いつも裏切られてきた宫原。そんな宫原が自分を信じられなくなったと言いだしても、石田にはよくわかる。
                    これからまた活动を再开するということはそんなストレスと一生共に歩くということになる。
                    「大丈夫だよ」
                    震える体を抱きしめた。
                    「トミもナルちゃん俺も、みやじと一绪にいるから。一绪にやるから。駄目になったって谁も后悔したりしないさ」
                    雨の音だけが闻こえる。宫原は腕の中でじっとしていた。
                    「自给自足の生活はさ、もっと先でもいいだろ。今はくだらないと思ってても、何か…何とかなるかもしれないからさ」
                    宫原がぽつんと呟いた。
                    「俺はさ、俺のために歌ってるんだ。お前らの为には歌えねえよ」
                    「谁も気にしてないよ、そんなこと」
                    「俺は、自分胜手だと思う自分が嫌だ。こんな自分が嫌だけど、変わるのも嫌だ」
                    「いいよ、そのままで」
                    その后も、宫原はぶつぶつ何か呟いていたけれど、石田にしがみつくようにして眠ってしまった。
                    片手で宫原を抱いたまま、石田はポケットから烟草を取り出した。これから先に自分たちのバンドがどうなるか分からないけれど、宫原だけは自分の侧にいるんだろうなと、漠然とそう思った。
                    结婚しても、一人でも、年寄りになっても、例え歌えなくなっても理屈臭い宫原が隣にいるんだろうか。そんなことを考えていると何だかおかしくなって、石田は少しだけ笑った。
                    


                    10楼2010-07-12 11:07
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                      接下来是翻译文,虽然有点删减,不过也好好的把老师的那种特有的平和文风翻译出来了。


                      11楼2010-07-12 11:09
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                        モルタルの二阶建てのアパートは、阶段がきしんで仕方がなかった。宫原が一人暮らしを始める时に、何を基准に部屋を选んだのか石田は知らないが(闻いたところで宫原がまともな返事を返すとも思えなかったが…)どうせろくな理由もないだろう。
                        ノックなんてするような、上等な造りのドアじゃない。ノブに手をかけてひくと、简単に扉は开いた。
                        「みやじ、いるのか」
                        石田は宫原を名前を呼ぶ时に、中学生の顷からのあだ名で『みやじ』と呼ぶ。こればかりはバンドを组んで十年以上経ってからも変わらない。
                        名前を呼んでも部屋の中から、返事はない。いつ来ても宫原の部屋は时代を置き忘れたような奇妙な匂いがする。正面の中央が微妙に歪んだ棚には鉄制の茶瓶がずらりと并び、古い浮世絵が无造作に壁に贴られている。そして夏なのに、未だ部屋の隅を占めている火钵。
                        石田は扉を闭め、ポストの中を探った。この部屋の主は、键をポストの中に入れるのは忘れなくても、部屋に键をかけることは简単に忘れてしまえるような男だ。扉にきちんと键をかけて、もとあったポストの中に置いてから、足早に阶段を降りた。
                        「どう、いる」
                        「駄目ですよ。出挂けてるみたいです。あいつ散歩に出挂けたら半日でもぶらぶらしてるような奴だから…」
                        丸眼镜の男は、うつむき加减にため息をついた。
                        「话したかったのになあ」
                        「宫原が帰ってきたら、山本さんの方に连络とるように言いますよ」
                        「うん、そうしてくれる。俺なんかが出しゃばったりしてこじれると嫌なんだけどさ、何かこう话が进んでないだろ。心配なんだよ」
                        「そうですね…」
                        「宫原くん、どう。最近さ」
                        石田は少し首を倾げた。
                        「どうって…いつもと変わりませんよ。けどやっぱり事务所の解散っていうのはきつかったみたいですね。やっぱし暗いですから」
                        「そうだよねえ。だから俺としては少しでも早く别の事务所なり契约して、活动を再开して欲しいんだけど」
                        男は唇を尖らせた。石田と付き合いの古い山本というこの男は音楽雑志のライターだ。
                        いつも石田の所属するバンドの特集を组んでくれる。
                        石田は十年前にE.L.Fというバンドのギターでデビューした。デビュー
                        当时は、ヴォーカルの宫原浩次の强烈な存在感と、ストレートなメロディ、歌词で注目されていたが、それも年月を追うごとに色あせてきた感じがあった。
                        そんな言い方をすると语弊があるもしれない。バンド自体がその方向性を见失ったと言う方が正しいのだろう。メンバーの四人が悩んで、迷ってそうして作り上げた作品は、结局は自分たちの自己満足でしかなく、外へ広がりをもつどころか、自分たちの轮の中だけで理解できないような形になってしまった。それが结局、セールスに影响し、自分たちの出したアルバムやシングルの売上は灿々たるものだった。
                        不思议なのは、これだけ底を这うようなセールス、理解できない、闻けないという评価をうけながら、山本の音楽雑志だけは自分たちを取り上げつづけてくれたことだった。
                        最初からE.L.Fのファンだと宣言して、レコード会社の契约を切られ、事务所まで解散してしまった自分たちを、未だに心配してくれている。
                        「じゃ石田君、连络頼むね」
                        山本は帰っていった。今日も、新しい事务所の话をもってきてくれていたのだが、肝心の宫原がいなくて话にならなかった。
                        石田はため息をついて歩きだした。事务所にも见放された自分たちが、これから先にどうなるかの不安はある。中学生の时の友人同志で组んだバンド。最初はこんなに本格的になるとは思わなかったが、高校生の顷から、もしかしたらギターで食べていくことができるかもしれないと思うようになった。
                        


                        13楼2010-07-12 11:10
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                          デビューするまではよかったけれどその先なんて考えてなかった。待望の新人のように扱われ、最初の顷は自分でも少しぐらい売れるんじゃないかと思ったけれど、结果は酷いものだった。
                          もう十年だ。一绪にやりはじめてもうそろそろ十年になる。自分を误魔化すことが、もうできなくなっているんだろうと石田は思う。バンドの実质的な収入だけではとても食べてけずに、石田はバイトをして日々の粮をかせいでいた。近顷はバンドよりもそちらの方が主な収入になっている。
                          バイト先の主人に、言われたことがある。
                          「バイトなんて言わずにさあ、うちに就职しちゃいなよ、石田君」
                          石田は自分がプロのギタリストなんだと、细かなプライドから胸を张って言うことができなかった。
                          E.L.Fは四人で一つのバンドだけど、确かに四人で一つなのだけど、自分が抜けても成り立っていけるかもしれないと思うことがある。それはドラムのトミこと富広や、ベースのナルこと高槻も思うところだろう。だけど宫原浩次のスペア、代わりはいないのだ。
                          探すつもりもなかったが、知らずに石田の足は宫原が好んで散歩する河川敷に向かっていた。宫原は一人で、时々女と一绪に果てのない散歩をする。石田も突き合わされたことがあるが、宫原の散歩は散歩の名を借りた耐久レースのようで、一度でギブアップした。
                          まるで异国に降り立った兵士のように、无言のまま宫原は延々と歩き続ける。そうして立ち止まっては訳のわからないことを闻いてくる。いつものことだ。
                          「石君?」
                          考え事をしながら歩いていた石田は、不意に目の前に现れた宫原に惊いた。考え事をしていて、全く前を见ていなかった。何年も前のジーンズにTシャツ、いつもの宫原の恰好で、河川敷沿いにある石を置いただけのおざなりなベンチに腰挂けている。
                          「何してたんだ」
                          宫原は肩まである髪の毛を、右手でぐしゃぐしゃとかき回した。
                          「散歩」
                          座っていてそれはないだろうと思ったけれど、宫原が散歩と答える以上、それは散歩なんだろう。
                          「山本さんがさ…」
                          无関心な目が、山本の名前に少しだけ兴味を示す。
                          「お前と话したがってたよ。事务所のことで相谈したいことがあるってさ」
                          「ふうん」
                          さっきは兴味深そうな目をしていたのに、次の瞬间、宫原は明后日の方向を向いていた。
                          また髪を掻きむしる。髪だけみたら駅前のホームレスと大差はない。
                          「石君、俺真面目に考えたんだけどさ…」
                          「なに」
                          「俺さ、真面目に駄菓子屋やろうと思ってんだよ。もう音楽なんてやめてさ」
                          またはじまった。石田は小さく息をついて宫原の隣に腰を下ろした。
                          「音楽やめるの?」
                          「俺って才能あると思うんだよ」
                          「何の、駄菓子屋のおやじのか」
                          「违う。音楽。俺の作る音楽ってメロディいいんだよ。歌词もいいんだよ。でもどうしてそれがみんなに伝わらないのかってずっと思ってたんだよ。おかしいなって…」
                          「そうだよな」
                          相槌を打ちはするけれど、石田は疑问を抱かずにはいられなかった。宫原の自信がどこから出てくるのか分からないからだ。确かに宫原はすごいと思う。ここまでエレファントカシマシを引っ张ってきたのは确かに宫原の力だった。
                          自分は宫原を、宫原の才能を信じられないでいるんだろうか。
                          人に话をしたら、十年も一绪にいてまだ気がつかなかったのかと笑われるかもしれない。だけど疑いはしても、石田はそれを认めたくなかった。
                          「駄菓子屋やるってのも、よく考えたら面倒だよなあ。金もかかるしさあ」
                          


                          14楼2010-07-12 11:10
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                            宫原は空を仰いだ。道行く人は平日の昼间にのんびり川端に座っている男二人をどんな
                            目で见ているんだろう。
                            「石君さあ…」
                            宫原が振り返る。
                            「俺と逃げようぜ」
                            石田が首を倾げると、宫原は眉间に皱を寄せた。
                            「逃げるんだよ。ここにいたら色々とうるさいからさ。そんなことと无縁の场所へにげようぜ。戸籍も墓もいらないようなド田舎に行って、自给自足の生活するんだ」
                            「自给自足か」
                            「そっ。牛で田んぼとか畑とか耕してさあ、服とか动物の皮で作るの。蚕とか饲ったりしてさあ…でも俺、どうやってそれで布つくるか知らないけど、まあどうにかなるだろうしさ」
                            まるで絵空事だ。宫原は时々真面目な颜でとんでもないことをいう。そんなことができる筈がないのに、宫原の中ではまことしやかな现実になる。
                            「いいよね、それ」
                            相槌をうっても、真面目にとりあってない自分を知っている。
                            「なっ、なあ。そう思う」
                            「ああ」
                            宫原は不意に立ち上がった。
                            「今から行こうぜ」
                            「今から?」
                            「どうせ何もかも舍てるんだから、いつから
                            でもいいだろ。今からいこうぜ」
                            宫原も颜は真剣だった。相槌をうった自分を石田はすぐさま后悔した。いい加减だったと订正することもできず、自分のポケットの中にある财布の残高を计算した。
                            男二人が安ホテルに一泊するぐらいの余裕はある。明日は店の休业日。一日ぐらい宫原のきまぐれに付き合っても大丈夫だ。
                            「行こうか」
                            「行くぜ」
                            宫原はうれしそうだった。何がそんなにうれしいのかわからない。だけど石田も正直逃げたいような気持ちがどこかにあった。
                            宫原は突然歩きだす。石田は慌てて追いかけた。
                            「どこ行くんだよ」
                            「どこって、逃げるんだろう」
                            「歩いて行くつもりかよ。そんなことしてたら时间ばかりかかるぞ。电车でもバスでも使えばいいだろ」
                            宫原は首を倾げた。
                            「电车って言うのが…俺、何か嫌なんだよなあ。やっぱ人间便利になり过ぎちゃいけないって気がするからさ」
                            「でも、歩いてじゃ远くへ行けないぞ」
                            宫原はきょとんとした颜をした。
                            「まあ、そうだな。今日ぐらいはいいか」
                            妥协の気配。急に歩みの遅くなった宫原の隣で、石田もゆっくりと歩きはじめた。
                            近くの电车の駅で、宫原は急に海が见たいと言いだした。
                            「绝対に海だよ。海と山の侧でさあ。そんな所がいいよ」
                            駅名パネルを见上げながら、石田は首を倾げた。どうすれば海沿いの电车に乗り継ぎできるかわからなったからだ。
                            「もう适当でいいからさ」
                            道顺を组み立てるまでに宫原が先に歩きだしてしまい、石田は慌ててその后を追いかけた。宫原は近距离の切符を买うと、一番最初にホームに滑り込んできた电车に何のためらいもなく飞び乗った。
                            昼过ぎの时间帯は人も少なく、椅子にもぽつぽつぐらいにしか人はいない。石田は椅子に座ったが、宫原は石田の隣、细い鉄柱にもたれかかるようにして立ち、决して座ろうとはしなかった。
                            「石君さあ…」
                            それまで思い诘めたような颜で黙り込んでいた宫原が、不意に话しかけてきた。
                            「アレさ」
                            宫原がアレ、と视线をやったのは电车の中にある车内広告だった。
                            「纸の无駄だよあな。俺いっつも思うんだけ
                            どさあ、日本人って无駄が多いんだよなあ。
                            何にしても宣伝、宣伝でさ。あの纸つくるのに外国の木を伐采してんだよ。それなら自分のトコの木を切れって言うんだ。いっそのこと输入禁止令しけばいいんだ。そしたらもう谁も无駄に木切ったりしないと思うんだよ」
                            


                            15楼2010-07-12 11:10
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                              「そんなこと考えてたのか」
                              「ん、まあね」
                              「宫原、座らないか」
                              「ん、いいよ。俺。立ってるから」
                              「立ってると话しづらいからさ、座ってくれないかな」
                              「ん…、そうかあ」
                              少し迷うふりを见せたけれど、宫原は椅子にこしかけた。椅子に座っても、まるで落ち着きのない子供みたいにそわそわしている。暇があればぼさぼさののび过ぎた髪を引っ张
                              り、まるで贫乏ゆすりをするように膝を揺する。
                              「宫原はさ」
                              「ん」
                              「考えすぎなんだよ。いっつも。何してもさ。これは俺だけじゃなくて、皆が言ってることだけどね」
                              「そんなことねえよ」
                              拗ねたような素振りで、反论する。
                              「そうだよ。だから宫原はいつも疲れてるんだ。あんな広告なんて放っておけばいいんだよ」
                              「でもなあ…」
                              気になりだしたら、どつぼにはまるまで落ち込む。宫原の精神状态は、そのまま作る音楽に反映されてきた。不安定な心の状态もそのままに。
                              心の葛藤がそのまま歌になる。时々理解できないような言叶や声を选んだりする。
                              どこか暗い表情の宫原の颜が、ぱあっと明るくなった。
                              「石君、海だ」
                              笑颜につられて振り返る。そこにはコンクリートの岸壁に面した海が见えた。
                              「何か汚ねえよなあ」
                              「仕方ないよ。东京湾だし」
                              「やっぱ人间が悪いんだ」
                              「宫原だって人间じゃないか」
                              「そっ、だから俺も悪いんだよ」
                              たまらなくストレートで、自分の中でこわれかけている宫原。自分で自分の状态を把握できなくていつも同じ场所をぐるぐる回っている。エキセントリックな男にひかれているのはなにも自分だけじゃない。雑志记者の山本も一绪だ。
                              「逃げるんならさ、もっと绮丽な海がいいよな」
                              「そうだよなあ」
                              宫原も海を见ている。汚い海をずっと见つづけている。不意に何か口ずさむ。今までの
                              自分の歌でも、他人の歌でもない。あまり驯染みのないメロディーラインだった。
                              「俺さ、音楽やめても歌うのは止めないよ」
                              振り返って、宫原は真面目な颜で呟いた。
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                              最终的に二人が降り立ったのは、夕方に近い时刻だった。海に沈みかけた夕日を见ながら、宫原が胜手に电车を降りた。石田もそれを追いかける。
                              あまり人のいない、寂しい駅だった。宫原は迷うことなく海へ向かって歩いていく。ほどなく海岸に出たが、ぐるりと浜辺を见渡した宫原は、
                              「ほんと、汚ったねえよなあ」
                              ぼそりと呟く。确かに远くから见たらオレンジ色の海面しか见えなかったけれど、近くで见る浜辺にはあちらこちらでゴミが散乱し、海面は灰色を帯びていた。
                              颜が暗かったから、宫原はまたこの浜辺の汚さについて考えてるんだろう。そうしていきつく结论がどうなるかまでは、石田には分からないけれど。
                              宫原は浜辺に腰を下ろして、暗くなる水面をじっと眺めている。
                              「みやじ」
                              名前を呼んでも返事をしない。ただひたすらに暗い海を见つめている。石田は宫原の视线を振り向かせる为に、乱暴に肩を揺さぶった。
                              「どうするんだ。ここにもう少しいるのか」
                              「あっ…おれ…」
                              「そろそろ泊まる所を探さなきゃな」
                              宫原がきょとんとした颜をして、そして次には不愉快そうな表情になった。
                              「别に泊まらなくてもいいじゃないか」
                              「え…」
                              踌躇いを见せた石田に、宫原は噛みつくような喋り方をした。
                              「俺たちは何にも頼らないで自给自足の生活をしていくんだから、今更どこかに泊まらなくてもいいだろう」
                              


                              16楼2010-07-12 11:10
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